1 : ゲームローカライスの落とし穴 2 : ローカライズすべき言語【ランキング】 3 : まとめ
1:ゲームローカライズの落とし穴
ゲームを制作売り上げを確保するために、日本国内だけではなく、海外にもゲームを発信しようと思うのは、ほとんど全てのゲーム会社が考えることでしょう。
モバイル(スマホ向けゲーム)を制作している会社は、海外で勝負をすることの難しさを十分に承知の上だと思いますので、基本的に日本語のみで販売をすると思います。
しかしコンシューマ向けゲームに関して言えば、はっきり言ってしまうとローカライズをしないというのはただただ勿体無いことです。なぜならば、当たり前ですが国内市場に比べても、海外のパイは圧倒的に大きいからです。
例えば、PC、スイッチ(Switch)、プレイステーション(PlayStation)などはむしろ、世界市場の9割は海外にあるので、その市場を狙わないことには、パブリッシャーとして大きい成功をつかめないのです。
尚、成熟している日本市場に比べたら、まだまだ伸びしろのある、もしくは未開拓とも言える海外市場に出て行かない理由があるとすれば、予算のみでしょう。だとすれば・・・このような現状の中、
『どの言語で出したらいいのか』
『どの言語にローカライズをしたらいいのか』
という悩みにぶち当たります。
ボリュームの少ないゲームの場合は、多言語に向けて一気にローカライズしたり、文字数が少ないゲームの場合は10言語に一気にローカライズをして販売する会社もあります。
しかし、例えば日本の王道とも言えるRPG。
これは100万文字、時には200万文字という文字数があったりして、それを複数の言語にローカライズすることは、とてつもなく大きな労力と資金がかかってしまうので、まずは優先するローカライズ地域を的確に選んだ方がいいと言えます。
歴史のあるゲーム会社、言語に関しての調査のできる会社などは、どこの市場に出すべきかを的確に判断できると思いますが、実績がまだ薄く、調査をする馬力が無い会社などは、例えば「RPGはドイツで人気と聞いたから、ドイツで出しましょう!」など『感覚的になんとなく』ローカライズする言語を選んでしまう場合も多いのでは無いでしょうか。
ま、それはドラゴン・クエスト、ファイナル・ファンタシーレベルになって来るとドイツでも売れはするでしょうが『RPGだから』と言うよりは、『名作だから』ですね。
弊社は12年間に渡ってゲームローカライズを行ってきたからこそみなさんに伝えたい『ある落ちて欲しく無い落とし穴』があります。
例えを出します。
FIGS(フランス語・イタリア語・ドイツ語・スペイン語)のリソースを持ったローカライズ業者はもちろん、
「ヨーロッパで出しましょう!」
「スペイン語は南米スペイン語とスペインのスペイン語を分けましょう!」
など、勧めて来ますが、それは全て自社(ローカライズ・ベンター)の都合です。時に、その地域のスタッフを抱えているから、そのようなことを言います。これが落とし穴ですね。
ローカライズだけではなく、自社からもゲームを出している弊社から言えることですが、
・どの言語がこれから伸びるのか
・どの言語にローカライズする意味があるのか
を第一に考えるべきです。(ローカライズ・ベンダーの都合ではなく)。
ローカライズ業者の都合に惑わされずに、どの地域から行うべきかを判断する1つの手助けとして、今回はローカライズすべき言語をランキング形式でご紹介します。
2:ローカライズすべき言語【ランキング】
1位 : 英語
2位 : 中国語(簡体字)
3位 : 中国語(繁体字)・ロシア語
4位 : 韓国語・ドイツ語・フランス語
5位 : ブラジルポルトガル語・トルコ語
6位 : 東南アジアの言語
7位 : イタリア語・スペイン語
8位 : ヒンズー語
1位 英語
1位は、腐っても英語です。極論ですが、英語を抑えさえすれば、FIGSの一部の市場は抑えられます。それは、例えばドイツ人のほとんどは、英語を流暢であるからです。
しかしここで問題です。ヨーロッパの英語とアメリカの英語を分けるべきかどうか。
私は『分けないべき』だと思います。そして、必ず『アメリカ英語』にするべきだと考えます。
もちろん、例えばプレイステーションやスイッチなどのコンシューマー向けのゲームで、時にはイギリスで売る際の『WiFiの利用について』などは英国の英語に合わせなければならない場合もあります。
でも基本的にゲームの中身はアメリカ英語でかまいません。
むしろベタに、イギリス英語に合わせようとすることによって、ものすごく不自然に聞こえてしまうのが日本のRPG、日本のゲームだったりします。
腑に落ちない方は、考えてみてください。
アメリカ英語で書かれた小説は、イギリスに合わせて編集されますか?
ハリウッド映画は、イギリスやオーストラリアに合わせて音声を変えますか?
しませんよね。なら、ゲームもそうあるべきです。
2位 中国語(簡体字)
中国語には恐ろしいほどのポテンシャルがあります。
これから、中国のゲーム市場においてパソコンもコンシューマーもまだまだ伸びます。下手したら、今の3倍にもなり得る唯一の市場です。
例えば、スチーム(Steam)でいうと、中国だけど3000万人以上利用者がいます。日本には100万人もいない中、中国だけで日本の30倍にもなります。
これから中国市場はさらに絶対的に伸びていくので、『腐っても中国』と言えるほど貴重です。
弊社も今現在、中国にとても力を入れている真っ只中です。
*ローカライズのベンダーの選び方に関しては別途、また記事にします。
関連記事 : 中国人スタッフが語る最新中国ゲーム市場
3位 中国語(繁体字)・ロシア語
3位は2つあります。
1つ目は中国大陸で使われる簡体字ではなく、台湾・香港・シンガポール、マカオなどで使用される繁体字。
この繁体字と同じくらい重要になってくる2つ目の言語が、ロシア語です。ロシア語は市場が大きくなってきてる上に、消費者の購買力も上がってきています。
また、ここは重要な理由が2つあります。
①ドイツ人は英語でもゲームをプレイすることができる。と上記で書きましたが、ロシアの場合は、ローカライズをしてあげないと、遊ぶことすらしないという人が多いです。
②ロシア語にローカライズをされたゲーム数が少ないので、まだまだブルーオーシャン状況です。
*ちなみに今回は日本からの目線でランク付けしましたので日本を入れていませんが、外国目線で日本を入れるとすると、日本はこの3位に位置付けられます。
4位 韓国語・ドイツ語・フランス語
これらの市場に、ゼロからチャレンジをする価値がありません。しかし、韓国・ドイツ・フランスで言えば、『ゲームをわかる』プレイヤーが多いので、日本国内での評判が良い作品であれば、購入してくれます。
ですので、自信作をお持ちであれば、評価が上がり、広まってからローカライズをすると、結構硬い数字を出したりします。
5位 ブラジルポルトガル語・トルコ語
企業秘密ギリギリのラインで公表します。PC、若しくはプレイステーションゲームの場合は、『とあるジャンル』だったら、実にダウンロード数が伸びる言語です。
例えばスペイン語、イタリア語に翻訳をするぐらいなら、ブラジルポルトガル語・トルコ語の方が、十分にやる価値があります。
6位 東南アジアの言語
東南アジアはこれからもっと力をつけてくると思いますが、まだまだ高額のゲームが売れない現状もあります。しかし、当たった時がかなりデカイといえるので、インドネシア語、タイ語、ベトナム語の3つは、今後ひょっとすると5位のブラジルポルトガル語・トルコ語らへんを上回ってくる可能性もあります。
7位 スペイン語・イタリア語
典型的なレッドオーシャンになっていますので、文字数の少ない作品の場合だけにローカライズをするよう、お勧めします。
ただ、スペイン語の場合は、一度ローカライズをすれば、巨大な南米市場を狙えることもありますので、ローカライズをするなら、まずはスペイン語からですね。
8位 ヒンズー語
こちらはユーザーが多い割に、購買力が極端に低いです。4〜5年間はまだランキング5位内にランクインしてくることは無いと言えます。
3:まとめ
結局、ローカライズするべき言語というのは、『その言語を何人の人が使っているか・その地域に何人住んでいるか』だけではなく、『ゲームを買っていただく見込み』『購買力』で決まってきます。
彼らに買う意思があるかどうかを見極めることが大切です。弊社も、パブリッシャーして失敗を重ね、各市場の実態をようやくつかめました。
これから、各言語に関して、どのようなポイントを抑えるべきかなど、細かいところは別記事で取り上げていきたいと思いますが、今回言えることは、弊社は弊社のタイトルを出した場合、このようなフィルターにかけて、ローカライズ言語の順番を決めている、ということです。
是非ご活用いただけたらと思います。
*ただし『ローカライズしたら必ず売れる』という保証はなく、どちらかというと言語によって1回のみならず2〜3回はゲームを発売しないとその言語の市場が認識してくれないなど、色々問題点はあります。
例えば、ヨーロッパで『RPGを発売したから買ってくれるか』というとそうとは限りません。市場にはありとあらゆるゲームが溢れかえるようになったため、最近では以前ほどの売り上げは見込めません。
常に変化するローカライズ市場のポイントを今後はシリーズとしてお伝えしていきたいと思っていますので、乞うご期待ください。
関連記事 : ローカライズ会社を見極める【5つのポイント】